精選版 日本国語大辞典 「花弁餠」の意味・読み・例文・類語
はなびら‐もち【花弁餠】
- 〘 名詞 〙
- ① つきたての餠を、蜜漬にした牛蒡(こぼう)に巻きつけたもの。皇室の正月行事に作り、神前に供えるもので、民間の鏡餠にあたる。もちはなびら。
- [初出の実例]「花びらもちのいしげなる気味をしゃうくゎん申侍るべし」(出典:狂歌・永正狂歌合(1508)九番・判詞)
- ② ( 「葩餠」とも書く ) 蜜漬にした牛蒡に、味噌あんをつけ、求肥(ぎゅうひ)で巻いた和菓子。京都市の名産。
花弁餠の語誌
( 1 )「俳・御傘‐一」に「正月の餠に菱花びらとてあり」とあるように、宮中や神社などの正月行事に用いられた「菱葩(ひしはなびら)」に由来する。牛蒡を押鮎に見たて、みそに雑煮の意を持たせたのが菱葩だという。宮中では、現在も新年お祝料理として、鯛の切り身や浅漬大根などと共に白い美濃紙に包んだ直径一五センチほどの菱葩の餠(「お祝いかちん」とも呼ばれる)が出される。
( 2 )一方、明治時代に裏千家一一世玄々斎が宮中の許しを得て初釜に用いるようになり、現在では新年の菓子としてよく見かけるものとなった。しかしこちらは宮中のものより小ぶりで、小豆色ではなく紅の菱餠を重ねたものが多い。