… 1907年詩集《室内楽》,14年閉塞的なダブリンに住む人々の挫折の諸相を描いた短編集《ダブリン市民》を出版。本格的な処女作というべきものは,アイルランド独立運動挫折期に育った少年が,家にも祖国にも宗教にも反逆して,己の運命を文学の世界に切り開いていこうとする姿をギリシア神話のダイダロスの姿と重ね合わせながら,内側から描いた《若き芸術家の肖像》(1916)である。幼児の内的経験の描写から始まるこの小説の斬新な手法は,19年にすでに芥川竜之介の注目を浴びている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」