苦悩の中を行く(読み)くのうのなかをいく(その他表記)Хождение по мукам/Hozhdenie po mukam

日本大百科全書(ニッポニカ) 「苦悩の中を行く」の意味・わかりやすい解説

苦悩の中を行く
くのうのなかをいく
Хождение по мукам/Hozhdenie po mukam

ロシアの作家A・N・トルストイの長編小説。作者が亡命地で書き始めた『姉妹』(1922)、『1918年』(1927~28)、『陰鬱(いんうつ)な朝』(1940~41)からなる三部作の長編小説。革命を生き抜いた知識人の思想遍歴をテーマとし、第一次世界大戦、革命、社会革命党SR(エスエル))の反乱アナキストマフノのウクライナ民族独立運動、白軍との国内戦などを歴史的背景として、美しい姉妹カーチャとダーシャ、その恋人ローシチンとテレーギンとが、生命や思想のたび重なる危機を乗り越えて、ついに再会するまでの苦難の歴史を描き出している。

[原 卓也]

『原卓也訳『苦悩の中を行く』全五冊(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の苦悩の中を行くの言及

【トルストイ】より

…1923年ソ連に戻って,推理小説の手法を用いた長編《技師ガーリンの双曲線》(1926),革命後の混乱した社会の中で生きる道を誤った女の悲劇を描く短編《毒蛇》(1928)などで作家としての力量を示した。 代表作となったのは十数年かけて完成した大長編《苦悩の中を行くKhozhdenie po mukam》(1922‐41)である。〈姉と妹〉(1922),〈1918年〉(1927‐28),〈陰鬱な朝〉(1940‐41)からなるこの作品は,革命を生きぬいた知識人の思想遍歴を聖母の苦難遍歴になぞらえて書いたもので,知識階級の三つの時期を描く。…

※「苦悩の中を行く」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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