荒田川廃水事件(読み)あらたがわはいすいじけん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「荒田川廃水事件」の意味・わかりやすい解説

荒田川廃水事件
あらたがわはいすいじけん

岐阜県の荒田川流域農民が,水質汚濁を招いた工場排水に対して対策を講じた事件。荒田川は長良川支流で,流域農民の灌漑用水として利用されるほか水産物の豊富な供給源でもあったが,1914年頃から低廉な工業用地を求めてこの流域に中小繊維工場などが進出,悪質な廃水を大量に出すようになった。同じ頃岐阜市の発展によって都市の生活排水も大量に出されるようになり,河川が急激に汚濁されてしまった。これに対して農民が水利組合などに団結して是正を求めた。農民は監視のための委員会を自主的に設けて,工場排水の立入り調査まで行なっている。これは第2次世界大戦の直前まで続けられたという。中小企業および都市排水による典型的な水質汚濁問題であると同時に,この被害者である農民が自主的に工場立入りまで行なってその是正に努力した点が注目される。

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