改訂新版 世界大百科事典 「華陽国志」の意味・わかりやすい解説
華陽国志 (かようこくし)
Huà yáng guó zhì
中国,東晋時代,常璩(じようきよ)の著。華陽(華山の南,すなわち四川から雲南にまたがる地域)の歴史を,各地の著名な人物を中心にのべたもの。常璩はさきに成漢政権につかえた。後漢王朝滅亡のあと地方文化の独自性への認識が強まり,各地で《先賢伝》《耆旧(ききゆう)伝》が著されたが,《華陽国志》も,四川を中心としたそうした書物の一つと考えることができる。人物,山水風物についての記述のほか,地方的な神話・伝説が書き留められている点でも貴重。自序によれば原本は10編から成った。現在12巻本が伝わるが,テキストに乱れが多く,後補の部分も少なくないとされる。清の顧広圻(ここうき)の校定が現在のところもっともゆきとどいている。
執筆者:小南 一郎
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