日本歴史地名大系 「葛西志」の解説
葛西志
かさいし
二五巻 三島政行著
成立 文政四年
写本 東京大学史料編纂所
解説 武蔵国葛飾郡葛西領に関する地誌。三島政行は幕府が「新編武蔵国風土記稿」編纂を開始した直後の文化八年に地誌調出役へ就任、文政八年頭取として「御府内備考」編纂に従事。一方で独自の地誌調査を進めて「葛西志」を完成させた。巻頭に松平定常と間宮士信の序文を置く。構成は、巻之一が葛飾郡および葛西領の概説で国絵図写を掲げ、巻之二で葛西領の河川を概説する。巻之三以降は西葛西領新田筋、西葛西領本田筋、東葛西領上之割、東葛西領下之割の順で領内の町村を記述し、巻末に江戸の海岸部の開発にかかる付図一〇巻をつける。三島自身が本所緑町に居住した関係で西葛西領の記述に詳しい。中世文書の採訪から葛飾郡の武蔵国編入時期を中世末頃と考証して、「続江戸砂子」など先行地誌の説を批判した。全体に地誌調所による現地調査の成果を反映しつつ独自の調査に基づく文書や資料を掲載しており、葛西領地域の地理および歴史に関する基本文献である。
活字本 昭和五―六年刊
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報