虫垂腫瘍

内科学 第10版 「虫垂腫瘍」の解説

虫垂腫瘍(腸疾患)

概念
 虫垂に発生する腫瘍の総称.虫垂腫瘍は,虫垂粘膜から分泌される粘液により内腔が囊状に拡張した状態である虫垂粘液囊腫(appendiceal mucocele)として発見されることが多い.良性・悪性にかかわらず,腹膜偽粘液腫(pseudomyxoma peritonei)に至る可能性がある. 腹膜偽粘液腫とは腹腔内に腫瘍細胞を含む粘液性腹水が大量に貯留した状態の総称である.虫垂腫瘍だけではなく,卵巣腫瘍に由来するものも含まれる.腫瘍細胞は組織学的に悪性と断定できない場合が少なくないが,いったん,腹膜偽粘液腫の状態となれば,予後は不良である.
病因
 一般的な腫瘍発生の病因に加えて,虫垂根部が炎症などのために閉塞して生ずる貯留囊胞も,広義の虫垂腫瘍である.虫垂内腔に発生した腺腫の増大により,虫垂内腔が閉塞し,粘液囊腫を生ずる可能性も指摘されている.
分類
 WHO分類(Carrら, 2010)による.
1)上皮性腫瘍(epithelial tumor):
過形成性腫瘍・腺腫・癌がある.粘液囊胞腺腫(mucinous cystadenoma)・粘液囊胞腺癌(mucinous cystadenocarcinoma)は,腺腫・癌の代表的組織像である.
2)内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor):
中腸(midgut)由来のカルチノイド腫瘍(carcinoid tumor),内分泌細胞癌がある.中腸由来のカルチノイド腫瘍は,古典的カルチノイド症状をきたしやすいといわれている.
3)間葉系腫瘍(mesenchymal tumor):
平滑筋腫・脂肪腫・神経腫・Kaposi肉腫・平滑筋肉腫の報告があるが,いずれもまれである.
4)リンパ腫(lymphoma):
Burkittリンパ腫の報告がある.
診断
 右下腹部腫瘤・急性虫垂炎類似の臨床症状から疑われ,腹部CT検査・腹部超音波検査などの画像所見に基づいて診断される.近年,大腸内視鏡検査の一般化に伴い,特有の内視鏡所見(図8-5-35A,B;虫垂口の粘膜腫瘍様隆起・虫垂口からの粘液の流出)から診断されることも少なくない.内視鏡下の生検により組織学的診断が得られる場合がある.
鑑別診断
 急性虫垂炎および,その鑑別すべき疾患【⇨8-5-17】との鑑別を要する.
治療
 放置すれば腹膜偽粘液腫となる可能性があるので,外科的切除を行う.癌が疑われる場合には,リンパ節郭清を伴う回盲部切除術などを行う.[冨樫一智・遠藤俊吾]
■文献
Carr NJ, Sobin LH: adenocarcinoma of the appendix, In: WHO Classification of Tumours of the Digestive System (Bosman FT, Carneiro F, et al ed), pp122-125, International Agency for Research on Cancer, Lyon, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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