日本歴史地名大系 「蝦夷海陸路程全図」の解説
蝦夷海陸路程全図
えぞかいりくろていぜんず
六三×八七センチ 木版色刷 小野寺謙 安政二年 北海道大学附属図書館蔵
解説 仙台藩が安政二年に幕府から白老以東の東蝦夷地およびクナシリ島・エトロフ島の警備を命じられたとき、同藩の学者小野寺謙が蝦夷地警備に赴く同藩藩士の旅程の便をはかって作製刊行したという蝦夷地図。当図における蝦夷島とカラフト島は、いずれも東部が横に広がったような異様な輪郭をもっている。小野寺は凡例のなかで、以前蝦夷地を訪れたときに入手した非常に詳細な地図に基づきながら、これを数種の刊行地図によって訂正したと述べているが、全体の形は松浦武四郎が仙台藩主にも献上したという三航蝦夷全図に酷似している。小野寺は経緯度にとくに留意したと述べているが、経度についてはクルーゼンシテルンの北太平洋西部地図を参考にしたらしく、ロンドンからの西経で示し、たとえば宗谷岬は西経二一八度となっている。この地図には西部は山丹・満州の一部を含んでいるが、「辺要分界図考」によったという北千島諸島の部分は剥離して失われている。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報