化学辞典 第2版 「融解温度」の解説
融解温度(核酸の)
ユウカイオンドカクサンノ
melting temperature
Tm と表記される.DNA溶液を加熱していくと,DNAの二重らせん構造がほどけるのに伴って260 nm の吸収が増大する.この吸光度の増加,すなわち核酸分子の変性は温度上昇に従って徐々に起こるのではなく,ある温度に達すると急激に起こり,かなり狭い温度範囲で最大値に達する.これは結晶がある融点で融けて液化する現象によく似ている.ちょうど吸光度が最終増加高の半分まで増加した温度を融解温度という.これはDNAだけでなくリボ核酸(RNA)でもみられる.溶液の pH や塩濃度,有機溶媒の量でいちじるしく変化する.また,塩基対のうち,G-C対が多い種ではこの Tm は高くなり,同じ塩類濃度では,DNAの Tm はそのGC含量に依存し,両者の間に直線関係が成り立つ.これはA-Tの塩基対は2本の水素結合によって結ばれているが,G-C対では3本であることによって説明される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報