化学辞典 第2版 「らせん構造」の解説
らせん構造
ラセンコウゾウ
helical structure
多くの鎖状高分子の分子鎖は,結晶状態で(溶液中のポリペプチドでも)らせん構造を形成するが,これは主鎖の結合角や内部回転角の安定性によって生じる.したがって,ポリマーの種類によってらせん構造もいろいろ異なる.一般に,らせん構造は繊維周期中に存在する構造単位の数pとその周期当たりの巻き数qの比p/qで表される.たとえば,イソタクチックポリプロピレンおよびイソタクチックポリスチレンは,繊維周期当たり3個の構造単位が存在し,1回転しているので(3/1)で示される.そのほか,イソタクチックポリ(4-メチル-1-ペンテン)(7/2),安定型の三方晶系のポリ(オキシメチレン)(9/5),ポリ(エチレンオキシド)(7/2)がよく知られたらせん構造をとるポリマーである.さらに種々のポリペプチドは,分子内水素結合を形成して,ほぼ(18/5)の非常に安定なαヘリックス構造をとる.そのほか,ポリペプチドに知られているらせん構造には,(3/1)のポリグリシンⅡ型,ポリ(β-ベンジル-L-アスパラタート)にみられる(4/1)のωへリックスなどがある.遺伝に関係するデオキシリボ核酸(DNA)では,2本の分子鎖が互いに水素結合による核酸塩基対を形成して,いわゆる二重らせん構造をとる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報