エチレンオキシド(読み)えちれんおきしど(英語表記)ethylene oxide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エチレンオキシド」の意味・わかりやすい解説

エチレンオキシド
えちれんおきしど
ethylene oxide

環内に酸素原子一つを含む3員環複素環式化合物で、エポキシド一種である。環状エーテルの一種であるが、3員環が大きなひずみをもっているので開環反応をおこしやすい。酸化エチレンオキシランともよばれる。

 エチレンクロロヒドリンと水酸化アルカリとの反応により生成する。この反応は、1859年にフランスのC・A・ウュルツにより最初に行われた反応で、エチレンオキシドの実験室的製法として知られている。


 1937年に銀触媒上でエチレンを空気または酸素で直接酸化する方法が開発され、工業的にはこの方法により製造されることが多い。無色液体または気体で、快いにおいをもち、揮発性が非常に大きい。水、エタノールエチルアルコール)、エーテルによく溶ける。可燃性で、空気との混合気体は爆発範囲が広く危険である。水と反応させると3員環が開環して鎖式のエチレングリコールになり、水酸化アルカリを触媒として重合させるとポリエチレングリコールになる。安価で反応性に富むので合成原料として有用で、エチレングリコール、界面活性剤、エタノールアミン、ポリエチレングリコールなどの原料としての用途をもつ。

[廣田 穰]


エチレンオキシド(データノート)
えちれんおきしどでーたのーと

エチレンオキシド

 分子式 C2H4O
 分子量 44.1
 融点  -112℃
 沸点  10.73℃
 比重  0.896(測定温度0℃)
 屈折率 (n)1.361

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エチレンオキシド」の意味・わかりやすい解説

エチレンオキシド
ethylene oxide

酸化エチレンともいう。化学式 (CH2)2O 。エチレンの気相酸化により製造される。実験室ではエチレンクロロヒドリンをアルカリで処理して得られる。有毒な無色の気体。沸点 12.5℃。水と自由に混合し,エチルアルコール,エーテルに易溶。鎖式エーテルと異なり,三員環構造が不安定なため反応性に富む。たとえば,希硫酸の存在で水と反応しエチレングリコールを生じ,アンモニアと作用しエタノールアミンとなる。また還元によって発生期の水素と作用してエチルアルコールになり,塩化水素を付加しエチレンクロロヒドリンとなる。さらにエチルアルコールと作用してグリコールモノエチルエーテル,重合させるとポリエチレングリコールとなる。合成繊維,合成樹脂,界面活性剤,ファインケミカルズの原料として重要。

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