日本大百科全書(ニッポニカ) 「衣かつぎ」の意味・わかりやすい解説
衣かつぎ
きぬかつぎ
サトイモを用いた料理。小さいサトイモを選んでよく洗い、皮をつけたまま塩もみしてからゆで、芽の部分から1センチメートルぐらいのところに包丁を入れる。これを3本指で持ち、指に少々力を入れると皮はするりとむける。衣かつぎの語は衣をかぶるという意味の「きぬかずき(衣被)」が転じたもので、皮つきのまま食膳(しょくぜん)に供され、皮をむくようすからつけられた名である。サトイモは、地下茎の膨らんだ部分が親イモで、その周囲のイモを子イモ、さらにその外側の小さいのを孫イモという。サトイモの青茎種の早生(わせ)イモ、石川イモ、土垂(どだれ)イモなどは子イモを用いる。衣かつぎは、月見料理にはかならず用いられる。サトイモを泥のついたままにして保存し、翌年の花見料理に用いたという昔話もある。
[多田鉄之助]