表皮母斑(読み)ひょうひぼはん(ゆうじょうぼはん/れつじょせいぼはん/れつじょせいたいせんようぼはん)(英語表記)Epidermal nevus (Verrucous nevus, Linear epidermal nevus, Linear nevus with lichenoid appearance)

六訂版 家庭医学大全科 「表皮母斑」の解説

表皮母斑(疣状母斑/列序性母斑/列序性苔癬様母斑)
ひょうひぼはん(ゆうじょうぼはん/れつじょせいぼはん/れつじょせいたいせんようぼはん)
Epidermal nevus (Verrucous nevus, Linear epidermal nevus, Linear nevus with lichenoid appearance)
(皮膚の病気)

どんな病気か

 生まれつき、または乳児期に気づく表皮部分のあざで、さまざまな部位に白からピンク色の小さな硬いいぼ状の結節(塊)が少し集まっています。時に皮膚の一定方向(ブラシュコ線)に沿って線状に分布することがあり(列序性)、また時にかゆみ湿疹のような変化を伴う(苔癬様(たいせんよう))こともあります(図62図63)。また黒ニキビ(面皰(めんぽう))が集まって分布する面皰母斑図64)もこの表皮母斑に含まれます。

 まれに他の皮膚の悪性腫瘍が合併して生じる可能性があるので、生まれつきあったあざの大きさや表面が変化してきた時は、医師に相談してください。

検査と診断

 特徴的な皮疹(ひしん)で診断は容易です。確定診断は、皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行えばつきます。ただ体の片側にわりと広く分布していると、その側の成長障害、骨変化、脳腫瘍(のうしゅよう)を伴う表皮母斑症候群である場合があります。その時は内臓病変への対応も必要な場合がありますが、頻度はまれです。

治療の方法

 気にならなければそのまま経過をみてよいのですが、自然に消えることは期待できません。

 整容面(見た目)の問題がほとんどなので、治療法としては外科的治療が一般的です。メス切除するか、比較的浅い部分の変化なので、皮膚をグラインダーで削る剥削術(はくさくじゅつ)や、最近では炭酸ガスレーザーを用いて削る方法もあります。面皰母斑は若干分布が深いので、メスによる切除が優先されます。いずれも多少の瘢痕(はんこん)傷跡)が残る可能性があるので、担当医とよく相談してください。

病気に気づいたらどうする

 生まれつき、または生後早期に先に述べたような皮膚面があり気になるようなら皮膚科、形成外科に相談してください。とくに大きな変化がなければそのまま経過をみてかまいません。

 ただ、前述のとおり、時に皮膚の悪性腫瘍が合併することがあるので、生まれつきあったあざに変化があれば早めに受診してください。

安田 浩


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「表皮母斑」の解説

ひょうひぼはんこうぼはんゆうじょうぼはん【表皮母斑(硬母斑/疣状母斑) Epidermal Nevus】

[どんな病気か]
 出生時、あるいは小児期に、いぼ状のざらざらした小さな盛り上がり(丘疹(きゅうしん))が、多数連なってできるものです。色は、正常の皮膚色か褐色です。表皮母斑はつぎの2つに大別されます。
■列序性母斑(れつじょせいぼはん)(線状母斑(せんじょうぼはん))
 線状、帯状に並んでできるものです。ふつう、かゆみなどの症状はありませんが、なかには、かゆみが強く、湿疹(しっしん)状になる特殊型(列序性苔癬様母斑(れつじょせいたいせんようぼはん))もあります。
■片側性母斑(へんそくせいぼはん)
 からだの片側だけに、広範囲にできる母斑です。ときには骨や脳の異常をともなうことがあります。
[治療]
 炭酸ガスレーザーで焼灼(しょうしゃく)(焼き切る)するか、外科的切除術、または皮膚を削り取る手術を行ないます。

出典 小学館家庭医学館について 情報

世界大百科事典(旧版)内の表皮母斑の言及

【あざ(痣)】より

…レックリングハウゼン病やプリングル病などのように種々の母斑が組み合わさってみられたり,内臓病変をともなうものは母斑症phacomatosisと呼ばれ,優性の遺伝性疾患であるが,普通のあざは遺伝することはない。
【母斑】
 母斑は,皮膚を構成する表皮細胞,色素細胞,血管,脂腺細胞などの要素が局所的にたまたま増加したもので,血管性母斑,色素細胞系母斑,表皮母斑,脂腺母斑などがある。
[血管性母斑hemangioma]
 血管腫とも呼ばれる。…

※「表皮母斑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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