補償融資(読み)ほしょうゆうし(英語表記)compensatory financing facility

日本大百科全書(ニッポニカ) 「補償融資」の意味・わかりやすい解説

補償融資
ほしょうゆうし
compensatory financing facility

一次産品輸出国などの輸出不振による国際収支悪化に対処するための融資制度。発展途上国は、その輸出の多くの部分を一次産品に依存しているが、通常、一次産品の需要の価格弾力性は低く、一方、その供給も短期的には非弾力的である。そこで、輸入国側の景気変動などによって需要が変化するとき、あるいは供給が自然条件の影響によって変化するときには、価格は大きく上下し、それに伴って輸出国の貿易収入も大幅に変動し、不安定化する。このような貿易収入の短期的な不安定性に対する対応策の一つとして1963年に採用されたのが、IMF国際通貨基金)による輸出変動補償融資制度である。緩衝在庫や輸出割当てなどの制度が市場への介入を伴うのとは異なり、この制度の特徴は、発展途上国の輸出収入が一定の額に達しなかった場合に、いわば事後的にその差額を融資するという点である。その後、融資対象は拡大され、輸入増加にも適用されるようになって、補償・偶発融資制度(compensatory and contingency financing facility)とよばれるようになった。

志田 明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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