日本大百科全書(ニッポニカ) 「覚世名言十二楼」の意味・わかりやすい解説
覚世名言十二楼
かくせいめいげんじゅうにろう
中国、明(みん)末清(しん)初の文人李漁(りぎょ)(字(あざな)は笠翁(りゅうおう))の短編小説集。1658年(順治15)に成る。明の「三言二拍」の成功に刺激されて、以後数多くの擬話本が刊行されたが、本書もその流れに棹(さお)さす。「合影楼」「奪錦楼」「三与楼」「夏宜楼」「帰正楼」「萃雅(すいが)楼」「払雲楼」「十卺(じっきん)楼」「鶴帰(かくき)楼」「奉先楼」「先我楼」「聞過楼」の12編38回からなり、「十二楼」という書名も、各編の題名でもあるこれら12座の楼にちなむ。また単に『十二楼』ともいう。風流才子李漁の戯曲小説は、すべてエンターテインメントに徹したものだが、本書もまた、新奇をねらった趣向といい、軽妙洒脱(しゃだつ)な叙述といい、彼の本領を発揮した作品となっている。
[村松 暎]
『辛島驍訳『十二楼』(『全訳中国文学大系23』所収・1958・東洋文化協会)』