日本大百科全書(ニッポニカ) 「親指小僧」の意味・わかりやすい解説
親指小僧
おやゆびこぞう
Daumesdick
『グリム童話集』(第37番)の話。子のない百姓夫婦が、親指くらいでもいいから子が欲しいと望むと、そのとおりの子が生まれる。親指小僧が馬の耳に入って馬を御しているのを2人の男がみて、見せ物にしようと買い取るが、親指小僧は逃亡する。僧侶(そうりょ)の家に盗みに入ろうとしている男たちをみて仲間になり、手下として先に忍び込むが、大声を出して女中を起こし、盗賊を追い払う。干し草の中で眠っていると、牛に食べられ、胃の中で叫ぶと、人々は牛に魔がついたと思って牛を殺す。捨てられた胃袋を狼(おおかみ)が飲み込んだので、親指小僧は狼を父の家へ誘導し、父母に殺してもらって、無事に外へ出る。父は二度と息子を売らないという。この話はほとんど全ヨーロッパ、トルコ、インドにも分布している。小さい子は本来、神に願って特別に授けられるものだったのである。
[小澤俊夫]
『高橋健二訳『グリム童話全集Ⅰ』(1976・小学館)』