記録写真(読み)きろくしゃしん(英語表記)documentary photo

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「記録写真」の意味・わかりやすい解説

記録写真
きろくしゃしん
documentary photo

ドキュメンタリー・フォトともいう。伝達媒体にかかわりなく,事実を客観的に描写し,内容的に資料的価値をそなえた写真。しかし記録写真はしばしば大衆に社会的現象本質を啓蒙し宣伝する役割も負わされている。アメリカで 1930年代の大恐慌に際し,農業安定局 Farm Security Administrationが組織した,南部農村の荒廃を啓蒙するカメラ・キャンペーンはその好例。もちろん個人的に作られる記録写真の例も数多く,写真の社会的役割が最も問われる分野である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の記録写真の言及

【写真】より

…この視覚体験は現在考えるよりはるかに大きな影響を人々に与えたはずである。 こうしていわゆる〈肖像写真〉は転機を迎えて,いわゆる記念写真,家族写真なども含めた広義の〈記録写真〉一般の中に融合されてゆくのだが,しかしいうまでもなく,今日においても肖像写真は個人を同定する視覚物として,またある意味でその存在自体を示し得る視覚物として,決して意味を失ってはいない。たとえば毎日の新聞紙上をにぎわす写真の大半は顔写真を含めた人物写真で占められているし,また結婚式や成人の日など,人生の結節点には必ず撮影される人物を中心に置いた記念写真,あるいは親しい者のあいだで少なからず行われているであろう肖像(顔)写真の交換,さらには,歴史的にはブロマイドに始まり,今日では種々のメディアを通じてはんらんしている他者(芸能人,有名人)の肖像など,これらは種々の別な要素を含むものではあるものの,大枠としては上述の肖像写真の系譜の中に位置づけることができるものであろう。…

【スナップ写真】より

…それはカメラが,いわゆる〈芸術的な主題〉ばかりではなく,この地上のあらゆる対象を自由に写真表現のモティーフとして獲得することを可能にし,絵画を範として成立していた芸術写真とは断絶した,写真独自の芸術的表現の基盤を形成することとなった。またスナップショットは,それまであまりかえりみられることのなかったアマチュア写真家,記録写真家たちのアンバランスな構成の写真や,伝統的な絵画の遠近法からはずれた失敗作と思われていた写真の中にも,写真らしい表現の成立をみることを可能にしたのであった。グラフ・ジャーナリズム全盛の時代に,《ライフ》などの誌面を飾った写真の中にもスナップ写真の傑作は数多いし,また,それは今日われわれの日常生活の写真撮影においても,一つの身近な常用手段となっている。…

※「記録写真」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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