日本大百科全書(ニッポニカ) 「谷中村滅亡史」の意味・わかりやすい解説
谷中村滅亡史
やなかむらめつぼうし
荒畑寒村(かんそん)の記録文学。1907年(明治40)8月、平民書房から刊行された四六判174ページの簡素な装丁の小著であるが、渡良瀬(わたらせ)川の鉱毒事件に直接かかわる義憤の書であったため発行と同時に発売禁止。田中正造(しょうぞう)の肖像と序文、ついで木下尚江(なおえ)の序文がある。資本家と結び付いた明治政府・明治国家との間に久しきにわたって展開された一大闘争史の集中的悲劇が、谷中村(栃木県下都賀(しもつが)郡)の強制取り壊しであるという観点より「一気呵成(かせい)」に書かれた激情の書。明治文献(1963)と新泉社(1970)よりの復刻版がある。
[紅野敏郎]
『『谷中村滅亡史――足尾銅山鉱毒事件の全貌』(1970・新泉社)』