イギリス児童文学作家A・A・ミルンの長編推理小説。1922年作。古典的推理名作として名高い。夏のものうい昼下がり、イギリスの田園に建つマーク・エブレットの邸(やしき)、赤い館に、長い間不和で、素行のよくなかった弟のマークが、突然訪れた。マークが中に入ってしばらくすると銃声。殺されていたのはロバートという男で、主人の姿はかき消えていた。上品なユーモアのタッチの描写は、それまでの推理小説にみられなかった手法で、しかもそれが論理的道具立てによくマッチしている。ミルンは推理物として、このほかに大ヒットした推理劇『完全アリバイ』(1928)、ホームズのパロディー、少数の短編も書いている。
[梶 龍雄]
『大西尹明訳『赤い館の秘密』(創元推理文庫)』