パロディー(読み)ぱろでぃー(英語表記)parody

翻訳|parody

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パロディー」の意味・わかりやすい解説

パロディー
parody

もじり詩,替え歌,戯文,変曲。ある作家,流派または作品の特徴をとらえて,作風や文体などを模倣・誇張して作った作品。風刺嘲弄のため,あるいは滑稽諧謔機知をねらって作られるが,鋭い批評の機能を果すこともある。古くはホメロス叙事詩をもじった『蛙と鼠の戦争』があり,アリストファネスは『』においてアイスキュロスエウリピデスのスタイルをパロディー化した。セルバンテスの『ドン・キホーテ』は当時流行の騎士道小説のパロディーとして始められた。イギリス文学では,フィールディングの小説『ジョーゼフ・アンドルーズ』が S.リチャードソンの『パミラ』のパロディーとして有名である。近代の詩文のパロディーの名手には,サッカレー,ルイス・キャロル,スウィンバーン,ビアボームらがいる。「パロディーの王様」と呼ばれたのは C.カルバリーである。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パロディー」の意味・わかりやすい解説

パロディー
ぱろでぃー
parody

もじり詩、戯文、ざれ歌。真摯(しんし)な作品の表現、文体などを模倣し、字句をかえたり誇張したりすることによって、滑稽(こっけい)味や風刺の効果を期待する文学形式。近年は絵画、彫刻の分野にもみられる。古くはアリストファネスがアイスキロスやエウリピデスの作品をパロディー化している。近世ではセルバンテスの『ドン・キホーテ』は中世騎士物語の、フィールディングの『ジョーゼフ・アンドルーズ』はリチャードソンの、それぞれパロディーである。わが国の狂歌川柳(せんりゅう)、洒落本(しゃれぼん)などにもこの傾向がみられる。二番煎(せん)じ、即興性を特色とするため低俗に堕するきらいはあるが、時代差の認識と批評精神に徹するとき、一級の文学となりうる。T・S・エリオットの『荒地(あれち)』がパロディー駆使の優れた例といえよう。

[船戸英夫]

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