改訂新版 世界大百科事典 「軸索反射」の意味・わかりやすい解説
軸索反射 (じくさくはんしゃ)
axon reflex
偽反射pseudoreflexともいう。末梢神経系において1本の細い求心性神経軸索(神経繊維のこと)が,末梢側で幾本かの枝に分枝している場合がある。その場合,特定の末梢部位を強く刺激して求心性神経軸索の分枝を興奮させると,その興奮が同一の神経の他の軸索分枝を逆行して伝わり,その軸索分枝の末梢側の末端にある種の反応を誘発する。見かけ上,反射のようなこの反応を軸索反射と呼ぶ。たとえば,皮膚の特定の部分に痛み刺激を加えると,刺激部位の皮膚は一過性に蒼白になり,次いで発赤が生じる。この場合,刺激部位の求心性神経繊維が興奮すると,その興奮が同じ神経のその周辺の血管を求心性に支配する分枝を逆行して伝わり,刺激部位の周辺の血管を拡張させるのである。この周辺の血管拡張の反応が軸索反射の一例である。この際,軸索末端から血管を拡張させるATPあるいはP物質のような化学物質が出てくるものと考えられている。
執筆者:佐藤 昭夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報