改訂新版 世界大百科事典 「輝度分布」の意味・わかりやすい解説
輝度分布 (きどぶんぷ)
luminance distribution
人間が見るさまざまな対象物の明るさ(輝度)の違いおよびその空間的な配置関係をいう。室内における視野は,窓や照明光源のように非常に明るい対象から,部屋の隅や机の下のように非常に暗い対象まで,明暗の異なる部分からなる。輝度の差異は,その対象物を識別するための重要な手がかりであるが,反面,視野を占める輝度の違いが大きすぎると,人間の目は,明るい面に順応したり,暗い面に順応したり,めまぐるしい変化を強いられ疲労する。したがって,視環境における見やすさや快適さは,環境全体の輝度分布に影響される。とくに,教室や事務室のように,多数の人間がさまざまな視作業を行う環境の計画では,あらゆる部分に視線が向かう可能性を考え,視対象はもとより,窓,照明光源,天井,壁,床,家具などの輝度を広く検討する必要がある。視対象の輝度と机上面などそれに近接する周辺部分の輝度の比は1:3から3:1の範囲におさめ,また窓や照明光源の輝度と窓壁や天井などそれに近接する周辺部分の輝度の比は20:1以下にすることなどが望ましいとされる。窓や照明光源の明るさは,それから発散する光を拡散させたり,遮ったりして調節し,室内表面や家具などの明るさは,それらに入射する光の量を増減したり,仕上材料の明暗(光の反射率)をくふうしたりして変化させる。
→輝度
執筆者:宮田 紀元
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報