改訂新版 世界大百科事典 「農林地質学」の意味・わかりやすい解説
農林地質学 (のうりんちしつがく)
agroforestrial geology
農林業の環境因子としての地質について究明する応用学。日本では脇水鉄五郎(1867-1942)がこの部門の開拓者である。明治・大正時代では応用地質学の主流であった。土壌の生成や性質,あるいは地形の形成についての知識は地質学に負うところがきわめて大きい。関西・山陽地方では,はげ山は花コウ岩山地に集中しているが,一方この地帯の水田では良質な米が生産される。またこの地方の古生層の山地ではスギ造林が多く,果樹栽培にも適している。地すべり地帯ではスギ林業が発達していると同時に水田も多い。変成岩の緑色片岩の山地ではスギの生育が良いが,黒色片岩の山地では不良であるなど岩石による風化様式の相違が林木の生育を左右する。農林地質学の主要課題には山地崩壊,地すべりなどの山地保全があり,早くからこの面の研究がある。さらに,水保全の立場で山地の地質構造を解明することも重要課題となっている。
執筆者:堤 利夫+橋本 与良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報