近付(読み)ちかづく

精選版 日本国語大辞典 「近付」の意味・読み・例文・類語

ちか‐づ・く【近付】

[1] 〘自カ五(四)〙
① 距離が近くなる。側に寄る。近寄る。
書紀(720)雄略九年七月(前田本訓)「伯孫就(チカツキ)(み)て心に欲(ほ)す」
※土左(935頃)承平五年二月五日「京のちかづくよろこびのあまりに、あるわらはのよめるうた」
② 知りあいになる。したしむ。親密になる。
※観智院本三宝絵(984)下「もしよき友にちかつけば、そのをしへ心にしむといへり」
徒然草(1331頃)一七五「ちかづかまほしき人の、上戸にてひしひしと馴れぬる、またうれし」
日葡辞書(1603‐04)「ヲンナ、または、ヲトコニ chicazzuqu(チカヅク)
③ 時期が近くなる。時日がせまる。
万葉(8C後)一七・三九九九「都辺に立つ日知可豆久(チカヅク)飽くまでにあひ見て行かな恋ふる日多けむ」
※火の柱(1904)〈木下尚江〉二「若きあり、中年あり、稍々老境に近づきたるあり」
④ ある状態に近くなる。あるものに似てくる。
暴君へ(1916)〈有島生馬〉「理想に近づく時多くの者は破産するか失望する以外に道はない」
[2] 〘他カ下二〙 ⇒ちかづける(近付)

ちか‐づ・ける【近付】

〘他カ下一〙 ちかづ・く 〘他カ下二〙
① 近くへ呼ぶ。近くに寄せる。そばに来させる。
太平記(14C後)三八「新開遠江守真行を近付て宣ひけるは」
死霊‐二章(1946‐48)〈埴谷雄高〉「顔を近づけた彼は」
② そばへ寄せて親しくする。
※書紀(720)用明元年五月(寛文版訓)「王たる者は刑人を近(チカツケ)ず。自ら往すべからず」
福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉品行家風「之を近(チカ)づけて何かの役に立つこともあらうと云ふやうな」
③ ある状態に近くする。似るようにする。
近代文学と生活の問題(1934)〈唐木順三〉二「自然主義文学を生活に近づけた。文学を事実に近づけた」

ちか‐づき【近付】

〘名〙 (距離的に近くなるところから) 知りあうこと。親しくなること。また、その人。しりあい。知人。また、「おちかづきのしるしに」「おちかづきのために」などの形で、今後親しくおねがいしますという意の挨拶(あいさつ)としても用いる。〔文明本節用集(室町中)〕
咄本・鹿の巻筆(1686)三「まへかたよりちかづきか」
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉初「お知己(チカヅキ)のウしるしに一献さし上てへげにござる」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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