近露村(読み)ちかつゆむら

日本歴史地名大系 「近露村」の解説

近露村
ちかつゆむら

[現在地名]中辺路町近露

福定ふくさだ村の東、大坂おおさか峠の東麓にある。東は野中のなか村、南は平瀬ひらせ和田わだの両村(現大塔村)と境される。中央を日置ひき川が大きく湾曲し、中心集落はその左岸段丘上に位置し、熊野街道中辺路がほぼ東西に通じる。「続風土記」によれば、小名相坂峠おうさかとうげ(大坂峠)が村域西部の熊野街道にあり、同湯田和ゆがたわはその西の尾根上にあって街道に沿う。同書は「村の端堰あり、近露の露は借字にて上露下露露谷等と同しく堰より起れる名なるへし」と記す。

平安時代から熊野詣の宿泊地として、院の御所や供奉者たちの宿所が設けられた。「為房卿記」永保元年(一〇八一)一〇月三日条に「申剋、着近湯々屋、先浴近湯之河水」とあるのはこの地で、「中右記」天仁二年(一一〇九)一〇月二四日条に「渡近津湯之川祓」とあり、「源平盛衰記」巻九(康頼熊野詣附祝言の事)には「近津井」とみえる。久安三年(一一四七)正月日付鳥羽上皇熊野詣雑事支配状(神護寺文書)に「近津湯御宿」とあり、藤原定家は「後鳥羽院熊野御幸記」建仁元年(一二〇一)一〇月一四日条に「入近露宿所」と記し、宿所近くに院の御所があったことなどを記している。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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