化学辞典 第2版 「連鎖移動」の解説
連鎖移動
レンサイドウ
chain transfer
連鎖反応の途中で連鎖伝達体の種類が変化すること.H2 と Cl2 からHClが生成する反応は,次のような連鎖反応によって進行する.
Cl2 → 2Cl・ (1)
Cl・ + H2 → HCl + H・ (2)
H・ + Cl2 → HCl + Cl・ (3)
反応(2),(3)がHCl生成に対する連鎖反応になっているが,ともに連鎖移動の例でもある.重合反応においては,成長活性種の活性が溶剤,単量体あるいはそのほかの化合物に移動して新しく成長反応が起こることをいう.たとえば,ビニル化合物の重合反応では,次式のような移動反応が成長反応との競争反応として起こる.
このような移動反応が起こると生成重合体の数平均重合度は,移動反応がないとしたときの重合度と次の関係がある.
ここで,kp は成長反応の,ktrm は単量体による移動反応の,ktrs は溶剤またはほかの化合物Sによる移動反応の速度定数である.
ktrm/kp = Cm,ktrs/kp = Cs
をそれぞれ単量体および溶剤などに対する連鎖移動定数という.生成重合体の平均重合度(平均分子量)を調節するために,とくに連鎖移動定数の大きな化合物を重合系中に添加することも行われ,この化合物を連鎖移動剤とよぶ.[別用語参照]連鎖重合
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報