内科学 第10版 「遺伝性オロト酸尿症」の解説
遺伝性オロト酸尿症(プリン・ピリミジン代謝異常症)
臨床症状・病態
オロト酸は,ピリミジン合成経路の中間代謝産物で,患者ではオロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(orotare phosphoribosyltransferase:OPRT)とオロチジン5′-リン酸脱炭酸酵素(orotidine 5′-monophosphatedecarboxylase:ODC)の両方の活性が欠損する.OPRTとODCは同じ蛋白質で,ウリジン-リン酸合成酵素(uridine monophosphate synthetaze:UMPS)が両方の活性をもつ.この活性欠損のため,オロト酸までの合成は亢進するがそこから先が進まないため,尿中に多量のオロト酸が排泄される(図13-6-13).症状は,骨髄および神経細胞の発育阻害により起こる.生後2~3カ月頃から,巨赤芽球性貧血が認められる.精神発達遅滞を認める.常染色体性劣性遺伝形式を示す.
診断・鑑別診断
尿素サイクル異常でも尿中のオロト酸が増加する.アンモニアは,カルバミルリン酸を経て尿素サイクルへ代謝されるが,尿素サイクルが機能していない場合にはカルバミルリン酸が増加し,オロト酸,ウラシルが増加する.尿素サイクル異常症の場合には,高アンモニア血症の発作時にはオロト酸は異常増加を示すが,非発作時には軽度の増加から正常範囲である.また,発作時にはウラシルも増加する.これに対し,遺伝性オロト酸尿症ではオロト酸のみが常に増加している.
治療・予後
不足するウリジンを投与する(図13-6-13)ことにより,貧血は改善する.発達発育に対しても改善できる.オロト酸結石も予防できる.ウリジンの投与量は,100~300 mg/kg/日である.[田中あけみ]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報