ウラシル(読み)うらしる(英語表記)uracil

翻訳|uracil

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウラシル」の意味・わかりやすい解説

ウラシル
うらしる
uracil

広く生物界に存在するピリミジン塩基の誘導体で、リボ核酸RNA)中に含まれている。無色の針状晶で、分子量は112。尿素とリンゴ酸とを発煙硫酸によって縮合させることにより合成できる。水には難溶で、有機溶媒にはほとんど溶けないが、温水には溶けやすく、アルカリにはエノール形(エチレン結合の一端ヒドロキシ基が結合した結合様式)となって溶ける。酸に対しては安定で、シトシンとは異なる。ウラシルは、遺伝現象やタンパク質の生合成などに関係する核酸の構成成分として重要な化学物質であるが、他の核酸塩基、アデニングアニン、シトシンのようにDNA(デオキシリボ核酸)にもRNAにも含まれるのではなく、RNAだけに含まれる。特殊なウイルスなどの場合を除いて、RNAは、RNA合成酵素がDNAの塩基配列を写しとることによって合成されるが、その際DNA中でチミンが配置されていた場所については、ウラシルが置き換わってRNA中に組み込まれる。またウラシルは、糖類の生合成に前駆体物質として重要な役割を果たすUDP(ウリジン二リン酸)グルコースなどの糖ヌクレオチド類の構成成分としてもきわめて重要である。

[笠井献一]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウラシル」の意味・わかりやすい解説

ウラシル
uracil

リボ核酸を構成するピリミジン塩基の一つ。デオキシリボ核酸には含まれない。構造は2,4-ジオキシピリミジン (分子式 C4H4N2O2 ) 。多くヌクレオチドとして細胞内に存在し,多糖類の合成などの中間代謝で重要である。

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