開かれた社会とその敵(読み)ひらかれたしゃかいとそのてき(その他表記)The Open Society and Its Enemies

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「開かれた社会とその敵」の意味・わかりやすい解説

開かれた社会とその敵
ひらかれたしゃかいとそのてき
The Open Society and Its Enemies

批判的合理主義の代表的思想家である C.R.ポッパーが,ファシズムマルクス主義という2つの全体主義の思想史的源泉を探究した政治哲学書。 1945年刊。ポッパーは呪術的でタブーに満ちた「閉じた社会」と,批判的な態度をもち知性による非暴力的改善を目指す「開かれた社会」とを区別し,前者から後者への移行を押しとどめ閉じた社会にとどまろうとする哲学的伝統こそが全体主義をもたらすと批判した。具体的にはプラトンヘーゲルマルクスがこうした伝統に属する哲学者として厳しく分析されている。

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世界大百科事典(旧版)内の開かれた社会とその敵の言及

【ポッパー】より

…ウィーン大学に学んだが師M.シュリックの主宰するウィーン学団の論理実証主義を批判し,処女作《探求の論理》(1934,英語増補版《科学的発見の論理》1958)で反証主義を唱え,その後の科学哲学の発展に大きな影響を与えた。ナチスを逃れてニュージーランドに亡命し,20世紀における社会思想史の最大傑作の一つと評される《開かれた社会とその敵》(1945)を書き,プラトン,ヘーゲル,マルクスの批判を通じて全体主義と権威主義を論駁(ろんばく)するとともに,民主主義に再検討を加え科学的社会変革論として漸次的社会工学piecemeal social engineeringを主張した。1945年イギリスに帰化し,ロンドン大学の教授となり,65年にはナイトの爵位(サーの称号)を授与された。…

※「開かれた社会とその敵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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