朝日日本歴史人物事典 「阿刀大足」の解説
阿刀大足
平安初期の学者。空海の母方のおじ。桓武天皇皇子伊予親王の侍読として活躍したが,大同2(807)年10月の親王謀反の事件に巻き込まれたものか,その後の事績などは不明。甥の空海が大足を頼って上京(平城京とも長岡京とも),大学へ入学する以前,論語,孝経,史伝などの個人指導を行ったことが,空海の『三教指帰』序などで知られる。空海の入唐実現は大足の援助によるといい,かの地で発揮された中国語や漢学の才能も大足の影響が大であったといわれる。空海を世に送り出した恩人といってよい。阿刀神社(京都市右京区嵯峨野)は平安遷都の際に移されたと伝える阿刀氏の氏神で,小さな祠を残すだけであるが,大足を偲ぶよすがとなっている。また上品蓮台寺(北区紫野)にも阿刀氏塔と称するものがある。
(瀧浪貞子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報