日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
電子線マイクロアナライザー
でんしせんまいくろあならいざー
Electron probe micro analyzer
試料上に直径を1マイクロメートル(μm。100万分の1メートル)程度に細く絞った電子線を照射し、被照射部分から発生する固有X線(特性X線)を利用して、その部分の定性分析および定量分析を行う装置。略称EPMA。この方法は1949年に発表され、60年代に入り実用的機器となった。初期にはX線マイクロアナライザー(XMA)とよばれていた。
電子銃、電子レンズ、偏向コイルなど通常の電子顕微鏡のものと類似している光学系、発生したX線を分けて検出するX線分光系、照射箇所を観察するための光学顕微鏡などから構成されている。普通、電子線を試料表面上に走査し、各点から発生する固有X線の強度に比例してブラウン管の輝度変調を行い、元素の二次元的な分布像を観察できるようになっている。また同時に発生する二次電子が表面の形状に関係するので、二次電子検出系でこの二次電子像を得て表面の状態を詳細に観測できるような装置が同一の装置に組み込まれており、両者の組合せで固体表面に関してきわめて優れた情報が得られる。微小領域が非破壊で分析できるので、表面層の分析や、文化財などの貴重な試料の分析など応用範囲が広い。
[高田健夫]
『加藤誠軌著『X線で何がわかるか――X線発見の社会的衝撃』(1990・内田老鶴圃)』