化学辞典 第2版 「電析」の解説
電析
デンセキ
electrocrystallization
電着ともいう.電気めっきが実用に関する表現であるのに対し,電析は金属が電気化学的に析出する現象あるいは機構に関する表現であり,無機非金属の析出をも含める.金属の電析は,金属イオンの溶液内拡散を無視すると,電荷移動過程(放電)と放電により生成した吸着原子の結晶化過程に分けられる.比較的高い過電圧(100 mV 以上)では,吸着原子濃度の増大により,互いに結合して核をつくり成長する.通常のめっき条件では,このような機構で多結晶の電析物が得られる.低い過電圧では吸着原子は表面を拡散し,キンク(結晶成長点)とよばれる表面欠陥に到達し,そこで結晶に組み込まれると考えられている.キンクの表面密度は,被電析物結晶の構造欠陥,とくにらせん転位の密度に依存するため,電析速度(電流)は結晶の欠陥密度に依存する.錯イオンからの電析では解離,吸着などの過程が加わり,現象はさらに複雑となる.[別用語参照]電解析出
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報