…また元信は数人の弟子とともに工房を組織することで大量の注文に応じていった。障壁画の場合は工房による共同制作が有効なものであって,石山本願寺の記録には子の松栄をはじめとする数人の名が見いだせ,大徳寺大仙院や妙心寺霊雲院の障壁画は,元信以外に弟の之信など数人が参加していると考えられている。中国画を手本として描いた筆様というそれまでの方法に対して,狩野派独自のスタイルである真・行・草の画体を作り上げたことも重要で,これによって大量の障壁画に共同してあたれるようになった。…
…退蔵院には本堂(1602,重要文化財),庭園(名・史)があり,ひょうたんでなまずを押さえるという禅の公案を描いた《瓢鮎(ひようねん)図》(室町,国宝)は,水墨画の先駆者である如拙の確実な作品として唯一のもの。霊雲院には書院(室町,重要文化財)および《山水花鳥図》(重要文化財)があり,後者はもと書院の貼付画で,狩野派を確立した元信の筆と伝える。天球院の本堂(1635,重要文化財)には同時期の伝狩野山楽筆障壁画(重要文化財)152面があり,豪壮な桃山絵画が江戸期に入って穏やかな作風に変わっていく過渡期の優品。…
※「霊雲院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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