塔頭(読み)タッチュウ

デジタル大辞泉 「塔頭」の意味・読み・例文・類語

たっ‐ちゅう【頭/塔中】

唐音
禅宗で、大寺の高僧の死後弟子がその徳を慕って墓の塔のほとりに構えた寮舎
大寺院の敷地内にある小寺院や別坊。脇寺わきでら

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精選版 日本国語大辞典 「塔頭」の意味・読み・例文・類語

たっ‐ちゅう【塔頭・塔中】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ちゅう」は「頭」の唐宋音 ) 仏語。
  2. 禅宗で、祖師開祖などの塔のある所。また、その院をつかさどる僧。
    1. [初出の実例]「令韜(れいたう)禅師は、曹谿の塔頭に陪侍して」(出典:正法眼蔵(1231‐53)供養諸仏)
  3. 祖師や大寺の高僧の死後、その弟子が師徳を慕って塔の頭(ほとり)に坊を構えたところから転じて、大寺の内にある小院。わきでら。
    1. [初出の実例]「老病に久く犯され、起居あたはずして、塔頭(タッチウ)にして療養す」(出典:米沢本沙石集(1283)一〇末)

たっ‐ちょう【塔頭】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「たっちゅう(塔頭)」の変化した語 ) 古墓。また、墓地

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改訂新版 世界大百科事典 「塔頭」の意味・わかりやすい解説

塔頭 (たっちゅう)

禅宗寺院の子院で塔中とも書く。高僧の住房や庵居から発展し,その墓(塔)を守って弟子が相伝した。塔の中で首座にあるところから塔頭と呼んだとも,また塔の頭(ほとり)でこれを守ったことから塔頭と呼んだともいう。室町時代に五山では庵居の風習が盛んとなって多く設立され,幕府では塔頭造営を規制したことがある。山号をもたず,院,庵,軒などの称号をもった。独立した一寺ではないが,所領を保有して末寺をもち,同門の派徒のよりどころ,一派の拠点となって規模も拡大し,実質的には一寺としての発展をみる。また檀越(だんおつ)と師檀関係をもつ塔頭は,檀越の墓所を内設し,檀越家の菩提寺的機能を兼ねた。安土桃山時代以降はことに菩提寺的性格を強くし,京都紫野,大徳寺の塔頭は,戦国大名などの墓所を内設する例が大部分であり,また大名の創建にかかる塔頭も多い。後世では単に本寺に所属して,その寺域内にある寺院も指すようになったが,真言,天台では塔頭の称を用いない。明治以降は法的には一末寺としての取扱いをうけている。

 塔頭の形態は,卵塔(らんとう),昭堂(しようどう),方丈(ほうじよう),僧堂,書院庫裏(くり)などから構成される。禅僧の墓を卵塔あるいは無縫塔と呼び,四角,八角の台座卵形の塔身をのせる。この墓塔を覆い守る堂を套堂(さやどう),祠堂,開山堂などと呼び,これと接続して拝礼する礼堂(らいどう)が昭堂である。方丈は塔頭住持の居室と客殿を兼ね,一般寺院の本堂の役割を果たす。護持仏や祖師像,位牌をまつる室中(しつちゆう),礼の間である下間(げかん),檀越の間である上間(じようかん),寝室である眠蔵(みんぞう),住持の居室の書院,衣鉢(えはつ)の間など整形六室取りとするものが大部分である。入母屋造の大型堂で,周囲に苑池をおくことが多い。庫裏とは渡廊で結ばれるが,庫裏寄りに中門廊のような玄関を付す。庫裏は切妻造で,土間に竈(かまど)を置いた民家の台所風の部分と,板敷き,畳敷きの部屋多数からなり,寺の事務所,食堂(じきどう),従僧居室を兼ねる。本堂を兼ねる方丈と庫裏を併列する形は,禅宗では地方寺院の本伽藍の形式にも用いられ,他の宗派の寺院にも応用されて近世仏寺伽藍の原形となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塔頭」の意味・わかりやすい解説

塔頭
たっちゅう

本寺の境内にある末寺院。塔中とも書く。塔は墓の意で、もとは高僧が寂すると、弟子がその塔の頭(ほとり)に小庵(しょうあん)を建て、墓を守ったことに始まる。のちには、大寺院の高僧が隠退したときなどに、寺の近くや境内に小院を建てて住し、没後も門下の人々が、この小院に住して墓塔を守り、祖師が生けるがごとく奉仕するに至り、それらをも塔頭と称する。次々と小院が建てられたために、しだいにその数も増え、たとえば鎌倉の円覚寺(えんがくじ)は一時、32庵二院を数え、いまでも12庵一院を擁している。元来、塔頭は大寺院に従属したが、明治以後では独立した寺院として扱われることが多い。

[永井政之]

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百科事典マイペディア 「塔頭」の意味・わかりやすい解説

塔頭【たっちゅう】

塔中とも。大寺のいわば寺内寺院。とくに禅寺では高僧の基所に建てられた塔,またその塔を守るための庵をいう。禅宗大寺の住持が十方住持制(門派にとらわれずに器量によって住持をえらぶ)で任命され,かつ官寺であっても,塔頭は塔主(たっす)の門徒が拠る私寺。師から弟子に住持職(しき)が相承される。
→関連項目孤篷庵聚光院

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塔頭」の意味・わかりやすい解説

塔頭
たっちゅう

仏教用語。寺院のなかにある個別の坊をいう。寺院を護持している僧侶や家族が住む。子院,わきでらともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の塔頭の言及

【塔頭】より

…禅宗寺院の子院で塔中とも書く。高僧の住房や庵居から発展し,その墓(塔)を守って弟子が相伝した。…

【寺院建築】より

…床はふたたび土間となった。主要伽藍のほかに高僧の住院を墓所とした塔頭(たつちゆう)ができ,開山塔と昭堂(しようどう),方丈(ほうじよう),庫裡(くり)などを配し小僧院の形をとる。これは後に一般の小寺院の原型となった。…

【禅宗寺院建築】より

…回廊の東には庫院(くいん),浴室,東司(とうす)など,西には僧堂,西浄(せいちん∥せいじよう)などが配される。法堂の北には方丈や客殿があり,伽藍周囲には塔頭(たつちゆう)と呼ばれる子院が置かれた。仏塔は中心部ではなく伽藍後方の高みに建てた。…

【本末制度】より

…第2の要因は,法務補完の必要に基づくものである。たとえば本坊境内に所在している塔頭(たつちゆう)がそれであるし,真宗などにおける檀家の日常的法務の担当者としての寺中や,遠隔地檀家に対する法務を行う下道場,下寺などがそれである。このようにして中世末期までには,各宗派ともに地方的な有力寺院が中本山となって小教団を形成していた。…

【室町時代美術】より

…また,安楽寺八角三重塔(長野),安国寺経蔵(岐阜)は禅宗様からなる特異な遺構であり,不動院金堂(広島)は五山の方五間単層裳階つき仏殿の規模に準ずるもので,屋内架構手法がいっそう発達している。禅寺では伽藍の周辺に塔頭(たつちゆう)群が営まれていて景観を特徴づけている。塔頭は禅僧寂後の祭享施設で塔所と昭堂を中心に客殿,庫裏(くり),僧堂,寮舎から構成されていた。…

※「塔頭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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