改訂新版 世界大百科事典 「静脈閉塞」の意味・わかりやすい解説
静脈閉塞 (じょうみゃくへいそく)
venous occlusion
静脈のつまることで,その原因として古くから,血液が固まりやすくなる,静脈の血流がゆっくりになる,静脈壁に変化が起こる,の三つがあげられている。静脈には,皮下組織などの浅いところにある皮静脈と,筋肉の間などの深いところにある深部静脈の二つがあって,同じように静脈がつまった場合でも,両者ではまったく症状が異なる。たとえば,下肢では静脈血輸送の分担は深部静脈が80%,皮静脈が20%となっているので,深部静脈がつまるとその末梢部には著しい鬱血(うつけつ)が起こり,下肢にむくみを伴い,皮膚の色も赤紫色になるが,皮静脈の場合には鬱血症状はみられず,つまった部分が硬くなり,赤くはれて痛い。深部静脈の閉塞では炎症症状はよくなっても鬱血症状が残り,頸静脈や上大静脈では顔に,腋窩(えきか)静脈では上肢に,大腿静脈では下肢にむくみがみられる。このなかで最も多いのは骨盤内の深部静脈の閉塞で,30~40歳代の女性に多い。早期に治療すれば成績はよい。
執筆者:三島 好雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報