ほおに色どりをそえるメーキャップ化粧品の一種。粉おしろいと同種の白色粉末原料に顔料を加え,プレスして固型にしたものとクリーム状のものがある。日本ではほおに紅をぬる化粧は《和名抄》にも記され,平安時代すでに用いられていたことが知られる。また《日葡辞書》(1603)には〈頰紅〉の語そのものが掲出されている。合成色素を使った洋風のほお紅(ルージュrouge)は大正末期から現れた。
ヨーロッパでは古代エジプト以来の天然朱や酸化鉄,鉛丹,アルカンナの根などを使ったほお紅化粧が続いていたが,中世に入ると白い肌が喜ばれるようになり,いったんはすたれたが,15世紀の終りになって再びほお紅が使われ,とくにルイ14世の宮廷で流行した。
執筆者:高橋 雅夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報