日本大百科全書(ニッポニカ) 「食い合せ」の意味・わかりやすい解説
食い合せ
くいあわせ
2種類以上の異なる食品を同時に食べて、不消化、中毒症状などをおこすことをいう。このような言い伝えは平安時代からあったという。また江戸時代に貝原益軒によって著された『養生訓(ようじょうくん)』には「同食の禁忌」という項があり、食品が列挙されている。昔からの言い伝えに、たとえば、そばとタニシ、ウナギと梅干し、ジャガイモとはっか、うどんとスイカ、ドジョウととろろ、サケとフグ、アカガイとツクシ、スイカとてんぷら、カニと氷水、タニシとこんにゃく、キュウリと油揚げ、コイとシソ、ビワとそうめん、シャコと焼酎(しょうちゅう)、マツタケとアサリ、ニシンとクワの実、タコとゴマ、サザエとサメなど数えきれないくらい多くある。このなかには熱いものと冷たいもの、また消化を鈍らせるものどうしといえるものもあろう。しかし、これら二つ以上の食品をいっしょに用いても有毒物を生ずることはないという。昭和初期の料理研究家村井政善は、食い合わせるとよくないといわれるものを数多く試食し、中毒のおそれのないことを身をもって証明し、論文を発表した。
[多田鉄之助]