油揚(読み)あぶらあげ

精選版 日本国語大辞典 「油揚」の意味・読み・例文・類語

あぶら‐あげ【油揚】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 野菜、魚肉などを油で揚げたもの。あげもの。
    1. [初出の実例]「Abura(アブラ) ague(アゲ)、または、Abura(アブラ) agueno(アゲノ) モノ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    2. 「わかねずみを油あげにしすまひておひたは、かかったが道理じゃ」(出典:虎明本狂言・釣狐(室町末‐近世初))
  3. 薄く切った豆腐を油で揚げたもの。あぶらげ。あげどうふ。あげ。
    1. [初出の実例]「一から十までぬけのなき口上のおとなしやかにしみじみとしたる事は、露をふくめる油あげのごとく」(出典:評判記・役者評判蚰蜒(1674)藤田小平次)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「油揚」の意味・わかりやすい解説

油揚げ
あぶらあげ

豆腐を薄く切って油で揚げた食品。江戸時代初期に江戸の町でつくられるようになった。当時は豆腐揚げとよばれた。薄揚げと生(なま)揚げ(厚揚げ)があり、単に油揚げといったときには、薄揚げをさすことが多い。

河野友美・山口米子]

薄揚げ

稲荷(いなり)の使いであるキツネは油揚げが好きであるというところから、あるいは、いなりずしの材料であるため、いなり揚げともいう。固めにつくった豆腐を薄く切り、重石(おもし)をかけて水を十分に切り、大豆油、菜種(なたね)油、ごま油などで揚げる。揚げ方は、最初120℃程度の低温で2~3分揚げ、次に180℃ぐらいの油に移して二度揚げする。一度目で被膜ができ、水蒸気の逃げるのが抑えられて約3倍に膨らむ。二度目で着色して固く張りのある製品となる。三角形、正方形長方形など、各地で形や大きさが異なる。

[河野友美・山口米子]

生揚げ

厚揚げともいう。普通、固めにつくった豆腐を薄揚げより厚めに切り、180~200℃の高温の植物油で一気に揚げてつくる。薄揚げが二度揚げであるのに対し、生揚げは一度揚げである。薄揚げと同様、多種の形がある。

[河野友美・山口米子]

栄養

大豆1キログラムから油揚げ1キログラムができ、油の含有量は薄揚げで33%、生揚げで11%である。タンパク質を薄揚げで19%、生揚げで11%含み、栄養的に優れた食品である。ただ、表面の油が空気にさらされるため非常に酸化しやすく、新しいうちに使うことがたいせつである。

[河野友美・山口米子]

料理

油揚げを使う料理は多いが、使用する前にかならず油抜きが必要である。油抜きは、熱湯を注ぐだけでよいが、いなりずしの場合は十分に湯煮(ゆに)して油を抜く。料理としては、薄揚げではきつねうどん、いなりずし、炊きこみ御飯、生揚げではおでんなどがある。

[河野友美・山口米子]


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改訂新版 世界大百科事典 「油揚」の意味・わかりやすい解説

油揚げ (あぶらあげ)

油であげた食物の意であるが,現在では薄く切った豆腐をあげたものをいう。なまって〈あぶらげ〉,また略して〈あげ〉ともいう。豆腐をあげたものには,ほかに生揚げ(厚揚げとも),がんもどきがある。生揚げは,ふつうの豆腐を厚く切ってあげたものであるが,油揚げ用の豆腐はあげた際の膨化をよくするために〈ご〉(豆腐)の加熱をひかえるなど,ふつうの豆腐とはやや製法が異なる。この豆腐を薄く切り,水切りしてダイズ油ナタネ油などであげるもので,内部は網状構造を呈する。タンパク質と脂肪に富み,汁の実,煮物その他利用範囲がひろい。キツネの好物とするところから,油揚げを使った食べものには稲荷ずし,きつねうどんなど,〈稲荷〉〈きつね〉を称することが多く,また,葛の葉狐に結びつけて〈信田(しのだ)〉とも呼ぶ。しかし,狂言や昔話に見られるキツネの好物はネズミの油揚げである。生揚げは焼いておろしじょうゆで食べたり,煮つけなどにする。
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百科事典マイペディア 「油揚」の意味・わかりやすい解説

油揚げ【あぶらあげ】

豆腐を薄く切って水気を除き食用油で揚げたもの。厚めに切ったものを生揚げ,または厚揚げという。油揚げは汁の実,煮物,いなりずし,しのだ巻など広く用いられる。
→関連項目豆腐初午

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「油揚」の意味・わかりやすい解説

油揚げ
あぶらあげ

圧搾して水分を少なくした板状の豆腐生地を揚げてつくる食材。初めは低温の油で揚げて膨化させ,次いで高温の油で表面の水分を飛ばす。味噌汁の具にしたり,二つに切って味をつけたものに酢飯(すめし)を詰めていなり寿司にしたりするほか,甘辛く煮た油揚げをそばやうどんにのせて,きつねそば,きつねうどんとして食する。

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