豆腐を薄く切って油で揚げた食品。江戸時代初期に江戸の町でつくられるようになった。当時は豆腐揚げとよばれた。薄揚げと生(なま)揚げ(厚揚げ)があり、単に油揚げといったときには、薄揚げをさすことが多い。
[河野友美・山口米子]
稲荷(いなり)の使いであるキツネは油揚げが好きであるというところから、あるいは、いなりずしの材料であるため、いなり揚げともいう。固めにつくった豆腐を薄く切り、重石(おもし)をかけて水を十分に切り、大豆油、菜種(なたね)油、ごま油などで揚げる。揚げ方は、最初120℃程度の低温で2~3分揚げ、次に180℃ぐらいの油に移して二度揚げする。一度目で被膜ができ、水蒸気の逃げるのが抑えられて約3倍に膨らむ。二度目で着色して固く張りのある製品となる。三角形、正方形、長方形など、各地で形や大きさが異なる。
[河野友美・山口米子]
厚揚げともいう。普通、固めにつくった豆腐を薄揚げより厚めに切り、180~200℃の高温の植物油で一気に揚げてつくる。薄揚げが二度揚げであるのに対し、生揚げは一度揚げである。薄揚げと同様、多種の形がある。
[河野友美・山口米子]
大豆1キログラムから油揚げ1キログラムができ、油の含有量は薄揚げで33%、生揚げで11%である。タンパク質を薄揚げで19%、生揚げで11%含み、栄養的に優れた食品である。ただ、表面の油が空気にさらされるため非常に酸化しやすく、新しいうちに使うことがたいせつである。
[河野友美・山口米子]
油揚げを使う料理は多いが、使用する前にかならず油抜きが必要である。油抜きは、熱湯を注ぐだけでよいが、いなりずしの場合は十分に湯煮(ゆに)して油を抜く。料理としては、薄揚げではきつねうどん、いなりずし、炊きこみ御飯、生揚げではおでんなどがある。
[河野友美・山口米子]
油であげた食物の意であるが,現在では薄く切った豆腐をあげたものをいう。なまって〈あぶらげ〉,また略して〈あげ〉ともいう。豆腐をあげたものには,ほかに生揚げ(厚揚げとも),がんもどきがある。生揚げは,ふつうの豆腐を厚く切ってあげたものであるが,油揚げ用の豆腐はあげた際の膨化をよくするために〈ご〉(豆腐)の加熱をひかえるなど,ふつうの豆腐とはやや製法が異なる。この豆腐を薄く切り,水切りしてダイズ油,ナタネ油などであげるもので,内部は網状構造を呈する。タンパク質と脂肪に富み,汁の実,煮物その他利用範囲がひろい。キツネの好物とするところから,油揚げを使った食べものには稲荷ずし,きつねうどんなど,〈稲荷〉〈きつね〉を称することが多く,また,葛の葉狐に結びつけて〈信田(しのだ)〉とも呼ぶ。しかし,狂言や昔話に見られるキツネの好物はネズミの油揚げである。生揚げは焼いておろしじょうゆで食べたり,煮つけなどにする。
執筆者:平野 雄一郎
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