日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳥の言葉」の意味・わかりやすい解説
鳥の言葉
とりのことば
Maniq al-ayr
ペルシアの詩人アッタールのもっとも名高い神秘主義比喩(ひゆ)詩。1177年ごろの作とされ、約4600句からなる叙事詩。題名はコーラン第27章に由来する。神との合一を願う神秘主義者を鳥に、神秘主義指導者を鳥たちの案内者戴勝鳥(やつがしら)に、神をカーフ山に住む鳥の帝王不死鳥に例える。数千羽の鳥が帝王を求めて苦難の旅に出立、途中で危険な七つの谷を渡り、海におぼれ、灼熱(しゃくねつ)の太陽に倒れ、目的の地にたどり着けたのはわずかに30羽にすぎなかった。これは、神秘主義の修行がいかに厳しく苦しく、脱落者が多く、神との合一の境地に到達できる者がいかに少ないかを描いている。30羽の鳥が不死鳥の御前で陶酔の境地に入る場面が、ペルシア語表現により巧みに詠まれている。影が陽で消えるように、30羽の鳥が神なる不死鳥と合一、一体化して作品は結ばれる。
[黒柳恒男]