御前(読み)みさき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

御前
みさき

主神の御前にあって前をつとめる小神のであったが,のちには民間信仰における死霊怨霊,きつね,つきものなどの呼び名となった。御前の恐ろしいものを荒御前という。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉の解説

お‐まえ〔‐まへ〕【御前】

[名]《「おおまえ(大前)」の音変化で、神仏・貴人の前を敬っていう。転じて、間接的に人物を表し、貴人の敬称となる》
神仏・貴人のおん前。おそば近く。みまえ。ごぜん。「主君のお前へ進み出る」
貴人を間接にさして敬意を表す言い方。「…のおまえ」の形でも用いる。
「かけまくもかしこき―をはじめ奉りて」〈・二四〉
「宮の―の、うち笑ませ給へる、いとをかし」〈・二七八〉
[代]《古くは目上の人に対して用いたが、近世末期からしだいに同輩以下に用いるようになった》二人称の人代名詞。
親しい相手に対して、または同輩以下をやや見下して呼ぶ語。「お前とおれの仲じゃあないか」
近世前期まで男女ともに目上の人に用いた敬称。あなたさま。
「私がせがれにちゃうど―ほどながござれども」〈浄・阿波鳴渡

お‐めえ【前】

[代]《「おまえ」の音変化》二人称人代名詞。「おまえ」のぞんざいな言い方。

おん‐まえ〔‐まへ〕【御前】

」の敬称神仏や貴人などの前。
女性が手紙の脇付(わきづけ)に用いる。御前に。

ご‐ぜ【御前】

《「ごぜん」の音変化》
[名]貴人。または、貴人の座前。
「えびすの―の腰掛けの石」〈虎明狂・石神
[代]二人称の人代名詞。婦人に対して用いる尊敬語。
「や、―、―、と言ひけれども音もせず」〈義経記・七〉
[接尾]人を表す名詞に付いて、その人に対する尊敬の意を添える。「尼御前」「母御前
[補説]ふつう、女性に対して用いるが、男性に対しても用いることがある。
「やや副将御前、こよひはとくとく帰れ」〈平家・一一〉

ご‐ぜん【御前】

[名]
貴人・主君などの座の前、または、面前。おまえ。おんまえ。みまえ。「陛下の御前で演奏する」
神仏や神社仏閣を敬っていう語。また、神主住職を敬っていう語。
「わしが死んでも―さんに相談して」〈康成・十六歳の日記〉
貴人や高位の人の敬称。また、その妻の敬称。
「―御寝なりて、御覧ぜず成りにき」〈今昔・二四・三〇〉
《「御前駆(ごぜんく)」の略》「前駆」を敬っていう語。みさきおい。みさきばらい。
「かの―、随身、車副(ぞ)ひ、舎人(とねり)などまで禄賜はす」〈・宿木〉
近世、大名旗本、またその妻の敬称。
「ある大名の―死去の後」〈浮・一代女・一〉
[代]二人称の人代名詞。
高位高官の男性を敬っていう。
「―の御贔負(ごひいき)に甘えまして」〈木下尚江火の柱
婦人を敬っていう。
「―たち、さはいたく笑ひ給ひて、わび給ふなよ」〈宇治拾遺・一四〉
近世、大名旗本、また、その妻を敬っていう。
「―の御出でなさるる儀ではござりませぬ」〈伎・毛抜
[接尾]
神の名に付いて、尊敬の意を表す。「竜王御前」「西宮の恵比須御前
人を表す名詞に付いて、尊敬の意を表す。「六代御前」「父御前
特に白拍子の名に付いて、敬称として用いる。「静御前」「祇王御前

み‐まえ〔‐まへ〕【御前】

神仏や貴人の前。おまえ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

大辞林 第三版の解説

おまい【御前】

おまえの転
二人称。同等以下の相手に用いる。 おまえよりやや卑俗な語感をもつ

おまえ【御前】

[2]
神仏・貴人の前。おんまえ。みまえ。 神の-にぬかずく
身分の高い人を直接にさすことを避けていう語。 -にはいと悩ましげにて/落窪 1
(「…のおまえ」の形で)身分の高い人を敬う気持ちで付ける語。 殿の-は三十より関白せさせ給ひて/大鏡 道長
[0]
二人称。
同等またはそれ以下の相手をさしていう。多く男性が用いる。 -はなんというだらしない男だ
相手を敬っていう語。男女ともに用いる。あなたさま。 -にだにつつませ給はむことを、ましてことびとはいかでか/源氏 手習
三人称。第三者を敬っていう語。あのかた。 これは-に参らせ給へ/源氏 玉鬘 二人称としては近世前期までは最も高い敬意をもって用いられたが、次第に敬意が薄れ、明治以降は対等またはそれ以下の者に対する語となった

おめえ【御前】

おまえの転
二人称。
同輩以下の者に対するぞんざいな言い方として用いられる。 おれがこうなったのも-のせいだ
近世には、対等あるいはそれ以上の者に対して、男女ともに用いる。 -お茶を上がるかえ/洒落本・青楼楽種

おんまえ【御前】

貴人の前。 陛下の-に進み出る
女性の手紙の脇付わきづけに用いる語。御前に。

ごぜ【御前】

ごぜん(御前)の転
貴人などに対する敬称。ごぜん。 えびすの-腰掛けの石/狂言・石神
二人称。女性に対し敬意を含めて用いる。ごぜん。 や-、-と言ひけれども音もせず/義経記 7
接尾
女性の名などに付けて、敬意を添える。ごぜん。 姫-

ごぜん【御前】

おまえの漢字表記御前を音読みした語
天皇や貴人の前。また、神仏の前。 -に伺候する
御前駆の略 騎馬で貴人の先導をする者。 -どもの中に例見ゆる人などあり/蜻蛉
貴人に対する敬称。近世、大名・旗本・大名の奥方に対する敬称。 -御寝なりて/今昔 24
二人称。
女性に対し敬意を含めて用いる。 -たち、さはいたく笑ひ給ひてわび給ふなよ/宇治拾遺 14
近世、大名・旗本、その奥方などを家臣が敬っていう語。 是ははしたない、-の御いでなさるる儀ではござりませぬ/歌舞伎・毛抜
接尾
神の名に付けて、尊敬の意を表す。 かかる折節には竜王-ともこそかしづき申すべき/盛衰記 18
人の名などに付けて軽い尊敬や親愛の気持ちを表す。 小松三位中将殿の若君六代-/平家 12
白拍子しらびようしの名に付ける敬称。 祇王-/平家 1

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

お‐まい【御前】

名〙 (「おまえ(御前)(二)」の変化した語) 対称。江戸時代、対等あるいはそれ以上の人にも用いたが、現代では対等以下の相手にやや卑俗な語感で用いられる。
洒落本・南閨雑話(1773)馴染の体「それもみんなおまいがしねんした事で、おかげでネ、此よふな、つまらねい身にまでなりいした」

お‐まえ ‥まへ【御前】

[1] 〘名〙 (「お」は接頭語)
① 神仏や貴人の前を敬っていう。ごぜん。みまえ。
※古今(905‐914)雑上・八七四・詞書「かめをおまへに持て出でて、ともかくも言はずなりにければ」
② 貴人の所に伺候すること。また、その人、すなわち宮仕えの女房。→御前達(おまえたち)(一)。
※たまきはる(1219)「御まへ許されぬ人は〈略〉たちのきて、障子のとにゐる」
③ 貴人に対し、その人を直接ささないで、尊敬の意を込める言い方。
※落窪(10C後)一「おまへにはいとなやましげにて、まだおきさせはざめれば」
④ 座敷。また特に、居間または客間。
※多聞院日記‐天正七年(1579)二月二二日「をまゑのたたみ指善四郎来了」
[2] 〘代名〙 (「お」は接頭語) 対称。
目上の人に対し、敬意をもって用いる語。近世前期までは、男にも女にも用い、また、男女とも使用した。
※蜻蛉(974頃)中「御まへにもいとせきあへぬまでなん、おぼしためるを見たてまつるも、ただおしはかり給へ」
※浮世草子・世間娘容気(1717)一「お前にもあんまりこはだかに物おほせられて下さりますな」
② 対等もしくは下位者に対して用いる。親愛の意を込めて用いる場合もある。江戸後半期に至って生じた言い方。〔俚言集覧(1797頃)〕
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「西光(せへかう)さん、おまへの頭巾(づきん)はいつもよりあたらしくなったやうだ」
[語誌](1)和語の「おまえ」「おんまえ」、漢語の「ごぜん」等いずれも漢字表記で共通するが、どのように関連し合って成立したかは明らかでない。
(2)(二)は、江戸前期までは、敬意の強い語として上位者に対して用いられたが、文化・文政(一八〇四‐三〇)頃になると、同等もしくは下位者に対して用いられるようになり今日に至った。

お‐めえ【御前】

〘代名〙 (「おまえ(御前)」の変化した語。「おめい」とも) 対称。現在では対等以下に用いるが、江戸時代には、男女ともに用い、目上の相手に用いることもあった。
※咄本・蝶夫婦(1777)足留の盃「居てくんなんすよふに、おめへをお頼(たのん)もふしんす」

おん‐まえ ‥まへ【御前】

〘名〙 (「おん」は接頭語)
① 神仏や貴人などの前。
※平家(13C前)一「甲良の大明神の御まへなる橘の木に」
② (場所をさす意が転じて) 貴人をさす。
※太平記(14C後)七「或夜御前より官女を以て、御盃(さかづき)を下されたり」
③ 前払(さきばら)い。おんさき。
※金刀比羅本平治(1220頃か)中「悪源太申されけるは、『義平御前(マヘ)(つかまつり)候はん』」
④ 女子書簡文の脇付け。御前に。
※伊東夏子宛樋口一葉書簡‐明治二七年(1894)八月八日「夏子様 御前 なつ」

ご‐ぜ【御前】

(「ごぜん(御前)」の変化した語)
[1] 〘名〙
① 貴人、または、貴人の座前、面前。
※虎明本狂言・石神(室町末‐近世初)「おきにもいしの有物を、ゑびすのごぜのこしかけのいし」
② 婦人を敬っていう語。
※満佐須計装束抄(1184)一「童・下づかひの装束、心得たるごぜしてよくたたみて」
③ (「御前駆(ごぜんく)」の略) 貴人の前駆。みさきおい。
※満佐須計装束抄(1184)一「ごぜといふ物は、さぶらひのつかさある五位・衛府などをいふなり」
[2] 〘代名〙 対称。婦人に対する敬称。
※義経記(室町中か)七「『やごぜごぜ』と言ひけれ共、音もせず」
[3] 〘接尾〙 人を表わす名詞について、その人に対する尊敬の意を添える。ふつう、婦人に対して用いるが、男子にも用いることがある。
※平家(13C前)一一「やや副将御ぜ、こよひはとくとく帰れ」
※浄瑠璃・国性爺合戦(1715)三「母ごぜを受取に門外迄出給へ」
[語誌]中世、「わごぜ」「ごぜ」などの接尾語的な表現から使われだし、単独でも用いられるに至った。中世からは(一)④の用法が生じ、近世には(二)の用法以外はほとんどこの意味で用いられるようになった。→ごぜ(瞽女)

ご‐ぜん【御前】

[1] 〘名〙
① 貴人の前、または貴人の座の前。おまえ。
※落窪(10C後)一「三の御方のを取りもて来て、御ぜんにまゐらむとて」
② 神仏または神社仏閣を敬っていう語。また、神主、住職を敬っていう。
※玉葉(1312)神祇・二七四一・詞書「御前に通夜して〈略〉とよみてまどろみ侍りけるに」
③ 大名、高家などの妻の敬称。奥方。
※今昔(1120頃か)三一「我が御前(ごぜん)達の御当りには何(いか)でか寄せむ」
④ (「御前駆(ごぜんく)」の略) 貴人の前駆。みさきばらい。みさきおい。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「御ともには〈略〉御随身ども、ごぜんすべき人、さらぬも多かり」
⑤ 近世、大名、旗本などをその家臣が敬って呼ぶ語。また、明治以後、高位高官の人を敬って呼ぶ語。
※歌舞伎・傾城壬生大念仏(1702)上「御前(ゴゼン)のしゅびを頼み上げます」
[2] 〘代名〙 対称。
① 婦人に対する敬称。
※とりかへばや(12C後)下「それは御ぜんの御はらからなどにやものをさせ給らんなどこそ思たまへしか」
② 高位高官の男性を敬って、その人に仕えている者などがいう称。
※火の柱(1904)〈木下尚江〉一六「あの時は、御前、何うなることかと私、ほんとうに怖う御座いましたよ」
[3] 〘接尾〙
① 神の名に付けて、その神に対する尊敬の意を添える。
※源平盛衰記(14C前)一八「かかる節には龍王御前(ゴセン)ともこそかしづき申すべき」
② 人を表わす名詞に付けて、その人に対する尊敬の意を添える。男女いずれにも用いた。
※宝物集(1179頃)「母御前も父之殿もかくれ給にければ」
※金刀比羅本保元(1220頃か)下「兄御前(ゴゼン)や、疾くたてまつれ」
③ 特に、白拍子の名に付ける敬称。
※高野本平家(13C前)一「まして祇王こせんを出させ給ひて」
[語誌](1)院政期以前の仮名文献に見える(一)①の意味は、「おまへ」と読むべき「御前」が伝写の際に書き替えられたもので、(一)④の意味のみであったとする説がある。
(2)院政期以降でも、(二)は婦人に対してのみ用いられており、和語「おまへ」が「御前」と表記され、それが音読されて成立したものといわれるが、成立当初から両者には意味用法に違いがあったらしい。
(3)(一)④の意味のものもまた、和語「みさき」が「御前」と表記され、それが音読されて成立したものか。

み‐まえ ‥まへ【御前】

〘名〙 (「み」は接頭語) 神仏または貴人の前。おまえ。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)一「如来の前(ミマヘ)にありて、掌を合せて立ちて頌を以て讚して」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

児童相談所

子供の福祉に関する相談に応じ,援助などを行なう行政機関。児相と略称される。児童福祉法に基づき,都道府県と政令指定都市に設置が義務づけられている。運営は厚生労働省の局長通知,児童相談所運営指針にそって行...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

御前の関連情報