日本大百科全書(ニッポニカ) 「鵜葺草葺不合命」の意味・わかりやすい解説
鵜葺草葺不合命
うがやふきあえずのみこと
彦火火出見命(ひこほほでみのみこと)(山幸(やまさち))と豊玉毘売命(とよたまびめのみこと)の間に生まれた子で、神武(じんむ)天皇の父(すなわち、日向三代の神の3代目)にあたる。この神の名は、豊玉毘売命が、海神の国から地上の国にやってきて、海岸のなぎさにつくられた鵜(う)の羽を葺草(かや)にした産室の屋根を葺(ふ)き終わらないうちに出産したことからつけられた。八尋(やひろ)の鰐(わに)になって出産しているところを彦火火出見命に見られたために、豊玉毘売命は海神の国へ帰った(『古事記』)。海神の娘が海岸で出産し、生まれた子が皇室の祖神となるというのは、海上漂着型の始祖神話の典型といえよう。なお、この神は海童神である。
[守屋俊彦]