家庭医学館 「鼓室硬化症」の解説
こしつこうかしょう【鼓室硬化症 Tympanosclerosis】
粘稠度(ねんちゅうど)の高い(ねばりけの強い)滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)(「滲出性中耳炎(中耳カタル)」)を放置しておくと、中耳に肉芽(にくげ)(増殖(ぞうしょく)した結合組織)ができてきます。
この肉芽が長年のうちに石灰化(せっかいか)、骨化(こつか)して、鼓膜(こまく)・耳小骨(じしょうこつ)がかたくなり、音の伝わり方が悪くなって難聴(なんちょう)がおこってきます。これが鼓室硬化症です。
[治療]
鼓膜の石灰化病変を認めるだけで、聴力障害がほとんどないか、あってもごくわずかであれば、まだ治療の必要はありません。
鼓膜の振動部分が周囲の骨と固着したり、鼓膜の振動を内耳(ないじ)に伝えるための耳小骨連鎖(じしょうこつれんさ)が周辺の石灰化病変と固着したりすれば、中等度の伝音難聴(でんおんなんちょう)(「伝音難聴と感音難聴」)となります。こうなると、聴力(ちょうりょく)改善のための鼓室形成術(こしつけいせいじゅつ)が必要になります。この手術は、硬化している病変を摘出(てきしゅつ)し、鼓膜、耳小骨の連鎖を再建します。