改訂新版 世界大百科事典 「1対1対応」の意味・わかりやすい解説
1対1対応 (いちたいいちたいおう)
one-to-one correspondence
林の木の数を知ろうとするとき,山の木1本ごとに,短く切った縄を巻き,用いた縄の数を数えることによって山林にある木の総数を調べることができる。これは,二つの有限集合が1対1に対応すれば,それらは同数の元からなることを利用したものである。さて,二つの集合A,Bが〈1対1に対応する〉とは,A,Bどちらにも過不足なく対がつくれることである。すなわち,Aの各元aにBの元bが対の相手として定まり,しかも,Bのどの元bにも,それを対の相手とするAの元aがあり,かつ,異なるAの元a1,a2には,それぞれ異なるBの元b1,b2が対の相手となっていることをいう。そして,この対をつくる関係を〈1対1対応〉という。ところで,無限集合の場合には,例えば,整数nと2nの対を考えると,整数全体nと,真に小さい部分集合である偶数全体2nに1対1対応がつく。そこで,1対1対応に基づいて,無限集合にまで個数の概念を拡張したものが,集合の濃度である。
執筆者:西村 純一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報