日本大百科全書(ニッポニカ) 「AFS条約」の意味・わかりやすい解説
AFS条約
えーえふえすじょうやく
海洋生物の船舶などへの付着防止のための塗料のうち海洋環境へ悪影響を及ぼすものの使用を規制するための条約。正式名称は「船舶についての有害な防汚方法の管理に関する国際条約International Convention on the Control of Harmful Anti-fouling Systems on Ships」。2001年10月5日にロンドンの国際海事機関(IMO)本部で採択され、2008年9月に発効した。TBT(トリブチルスズ)をはじめとして有機スズ化合物は、船舶などへの海洋生物の付着防止剤として広く使われている。国際海事機関は、すでに1989年にその有害性を確認しており、TBTを含む付着防止塗料の使用抑制を勧告してきた。その後1999年から有害な付着防止塗料に関する条約の準備が始められていた。
この条約は安全な付着防止システムの構築を目ざしており、船舶用付着防止塗料に含まれている有害な有機スズの使用を禁止するとともに、将来用いられる可能性のあるその他の有害物質の使用防止のための制度を設定している。禁止または規制される付着防止システムは、付属書Ⅰに定められている。具体的には、有機スズ化合物の塗装および再塗装は、2003年1月1日以降は禁止。また、2008年1月1日以降は、船舶および海上構築物は有機スズ化合物を表面から除去するか、または、防止コーティングをしなければならない。
国際航海に従事している400総トン以上の船舶は、海運に従事する前、またはこの条約の下の国際付着防止システム認証制度が最初に運用されるときおよび同システムが変更・改正されたときに、検査を受けなければならない。400トン以下でも全長が24メートルを超える船舶は、付着防止システムに関する声明書とともに塗料の領収書または業者の納入書を備えなければならない。また締約国は、自国に登録されている船舶、運航管理下にある船舶および入港する船舶に対して、有害な付着防止剤を使用することを禁止しなければならない。
[磯崎博司]