船底塗料(読み)せんていとりょう

日本大百科全書(ニッポニカ)「船底塗料」の解説

船底塗料
せんていとりょう

さび止めおよび海洋生物の付着を防ぐために、船の満載喫水線から下の船底部へ塗る塗料。船底部はつねに海水と接触しているので腐食しやすい。また、カキフジツボなどの海洋生物が付着して成長を続けるので凹凸ができて速力低下の原因となる。これらを防止するための船底塗料には、1号塗料、2号塗料および3号塗料がある。1号塗料はさび止めを目的とした下塗り用の塗料で、アルミニウム粉、べんがら、鉛などを各種合成樹脂で練り合わせたものである。2号塗料は生物の付着防止すなわち防汚と上塗りを兼ねた塗料で、普通のペイントに防汚剤として亜酸化銅を混ぜてある。以前は毒性のある水銀やヒ素の化合物、有機スズ系化合物が使われていたが、現在は人体への安全と環境汚染防止のため使用が禁止されている。3号塗料は水線塗料ともよばれる。すなわち、水線付近は波に打たれたり岸壁やブイと接触するほか、喫水の変化で乾いたりぬれたりを繰り返す。このため、水線付近には、防錆(ぼうせい)や防汚のほか摩耗や乾・湿を繰り返す環境にも有効な3号塗料を上塗りに使う。最近、これらとは別に、ウナギの粘膜のようにぬるぬるする塗料を上塗りして水の抵抗を減らし、速力をあげようという研究が行われ、かなり効果をあげている。

[森田知治]

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化学辞典 第2版「船底塗料」の解説

船底塗料
センテイトリョウ
ship-bottom paint

木船用船底塗料と鉄船用船底塗料とがある.前者は船底の害虫による侵食藻類の付着による船の減速を防ぐために用いられる塗料で,一般には,エナメルペイントが使用され,酸化銅(Ⅰ)を顔料として,油分が少なく樹脂分の多いワニスを展色剤として用いてつくる.後者は鉄の防せいと防汚を目的とし,鉄面に直接塗布して防せいするための防せい塗料(1号塗料)と,フジツボなどの貝虫や藻類の付着および寄生を防ぐために防せい塗料の上に塗布する防汚塗料(2号塗料)とがある.なお,2号塗料に用いられる有機スズ化合物(トリブチルスズなど)が内分泌かく乱物質の疑いがもたれ,この種の塗料の使用が禁止された.

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百科事典マイペディア「船底塗料」の解説

船底塗料【せんていとりょう】

船底の腐食,生物の付着を防ぐための塗料。さび止め塗料(1号船底塗料)を下塗りした上に,生物付着防止のためスズまたは銅の化合物などの有機毒物を配合した防汚塗料(2号船底塗料)を塗る。防食を完全にするために電気防食を併用することが多い。近年,有機スズ化合物のトリブチルスズ(TBT)が内分泌攪乱(かくらん)乱化学物質(環境ホルモン)であるとされるなど,船底塗料による海洋・生物汚染が問題になっている。
→関連項目塗料

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「船底塗料」の解説

船底塗料
せんていとりょう

海水のために船底が腐食したり,海藻貝殻が付着したりするのを防ぐために塗る塗料。塗装はまず一号塗料 (防錆塗料) を塗り,次に二号塗料 (防汚塗料) と呼ばれる酸化水銀や亜酸化銅,ヒ素,スズなどの毒物を配合した塗料を上塗りする。耐久期間は約8ヵ月~1年半。また水線付近に塗る水線塗料を三号塗料と呼ぶ。

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世界大百科事典 第2版「船底塗料」の解説

せんていとりょう【船底塗料 ship bottom paint】

鋼船では船底の腐食を防ぎ,生物の付着を防止して,船の推進抵抗の増大を抑制するために,また木船では生物の付着およびキクイムシフナクイムシを防ぐために用いられる塗料。
[鋼船船底塗料]
 船底外板面を前処理後,まずさび止め塗料(1号船底塗料またはACという)を下塗し,生物付着防止のため,その上に防汚塗料(2号船底塗料またはAFという)を塗る。付着生物にはフジツボ,カンザシゴカイ(セルプラ)のほかにカキ,イガイコケムシ,ホヤなどがあり,これらの付着防止は毒物によるのが普通である。

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