改訂新版 世界大百科事典 「船底塗料」の意味・わかりやすい解説
船底塗料 (せんていとりょう)
ship bottom paint
鋼船では船底の腐食を防ぎ,生物の付着を防止して,船の推進抵抗の増大を抑制するために,また木船では生物の付着およびキクイムシ,フナクイムシの害を防ぐために用いられる塗料。
鋼船船底塗料
船底外板面を前処理後,まずさび止め塗料(1号船底塗料またはACという)を下塗し,生物付着防止のため,その上に防汚塗料(2号船底塗料またはAFという)を塗る。付着生物にはフジツボ,カンザシゴカイ(セルプラ)のほかにカキ,イガイ,コケムシ,ホヤなどがあり,これらの付着防止は毒物によるのが普通である。銅化合物(とくに酸化銅(Ⅰ)Cu2O),有機スズ化合物が用いられる。水銀化合物の使用は禁じられている。1号の展色剤には塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体,塩化ゴム等水の透過性の小さい樹脂が使用され,施工中および施工後におこる塗膜欠損による穴あき腐食に対しては電気防食が適用される。2号の展色剤は,銅化合物に対しては1号と同じ樹脂が使用されるが,最近,加水分解によって塗膜表面から順次溶解していく(自己研磨性という)アクリル系樹脂が好んで適用されている。生物の付着が防止されると同時に,塗膜表面が海水中でぬるぬるするので推進抵抗が低減し,燃費が節約(15%程度)される理由による。将来は無毒物による2号船底塗料の出現が期待されている。
木造船船底塗料
酸化銅(Ⅰ)を主要毒物とする塗料が使用されるのが普通であったが,最近は自己研磨型防汚塗料も使用されている。
執筆者:大藪 権昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報