カジノ資本主義(読み)かじのしほんしゅぎ(英語表記)casino capitalism

知恵蔵 「カジノ資本主義」の解説

カジノ資本主義

1980年代から、投機的な国際金融取引が短期利得を目指して、活発になったことを指して、英国の国際政治経済学者、S.ストレンジが命名した。国際資本移動が自由化されて、その取引規模が膨大になったこと、為替相場金利、金融資産価格が必ずしも実体経済を反映しない形で激しく変動するようになったことが背景にある。90年代は、欧州や東アジアの通貨危機を誘発したヘッジファンドや、デリバティブ理論を開発したノーベル経済学賞受賞者が経営に携わったLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の経営破たんなど話題に事欠かなかった。金利、為替相場の変動を利用して投機や利鞘(りざや)を狙った行為は資本主義付き物であるが、近年はその取引範囲も及ぼす影響も、グローバル化してきた。98年10月のG7ではヘッジファンドの活動が、99年のケルンサミットでは「オフショア金融センター」が、それぞれ監視の対象とされた.

(石見徹 東京大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カジノ資本主義」の意味・わかりやすい解説

カジノ資本主義
カジノしほんしゅぎ
casino capitalism

S.ストレンジが 1986年に著した本のタイトルとしても用いられている。 20世紀後半における変動相場制への移行や,各国金融の自由化,国際化などによる金融取引の活発化と量的な拡大,金融リスクの増大キャピタルゲインを含む金融面での収益率の増加が,マネー・ゲームを活発に行なわせるようになり,あたかも密室の中でのギャンブルのように実体経済とは乖離 (かいり) したところで金融活動が行なわれていることから,カジノ資本主義と呼んだ。

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