大桑・万願寺動物群(読み)おんままんがんじどうぶつぐん(英語表記)Omma-Manganjian fauna

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大桑・万願寺動物群」の意味・わかりやすい解説

大桑・万願寺動物群
おんままんがんじどうぶつぐん
Omma-Manganjian fauna

石川県金沢市郊外の大桑(おんま)付近、および秋田県由利本荘(ゆりほんじょう)市万願寺付近の新第三系鮮新世から産出する動物化石群。いずれも寒流型の海域にすむ動物群であることに注目して、大塚弥之助(やのすけ)が1938年(昭和13)に命名した。しかし、その後の研究でこれらの動物群は第四系更新統上部に属する、氷河時代前期の動物化石群と改められた。北海道の十勝平野の更別(さらべつ)動物群、渡島(おしま)半島の瀬棚(せたな)動物群、新潟県の魚沼(うおぬま)動物群、静岡県掛川地域の小笠山(おがさやま)層群の動物化石群、南関東の上総(かずさ)層群の動物化石群などがこの時期のものである。

 これらの動物群は、氷河時代の気温の変化に伴い、産出する地層の位置によって、寒流型の動物群と暖流型の動物群のいずれかが優勢になったり、両者が混じったりしているため、地層の順に動物群の内容を調べて、当時の海水の温度変化を推定することができる。南関東の上総層群は多摩丘陵から三浦・房総両半島の北部にかけて分布し、古東京湾とよぶ東に口を開いていた湾のなかの堆積物である。

[大森昌衛]

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