北海道南西部、檜山(ひやま)支庁(現、檜山振興局)管内にあった旧町名(瀬棚町(ちょう))。現在は久遠(くどう)郡せたな町の北部を占める地域。旧瀬棚町は1921年(大正10)町制施行。2005年(平成17)、久遠郡大成町(たいせいちょう)、瀬棚郡北檜山町(きたひやまちょう)と合併、せたな町となる。旧町名はアイヌ語のセタルペシュペナイ(犬が泳ぎ渡る川の意)の転訛(てんか)。旧町域は渡島(おしま)半島の中央部に位置し、日本海に臨む。国道229号が沿岸を走るが、旧国鉄瀬棚線は1987年(昭和62)廃止、バスに転換。瀬棚港は奥尻島(おくしりとう)へのフェリーが発着する(4月下旬~10月下旬)。北部は狩場(かりば)山地で、海岸も段丘が多い。かつてはニシンの千石場所で栄え、現在もイカ、マスなどの漁業が中心。乳・肉牛飼育やアスパラガス、ジャガイモ、カボチャなどの農業、それら一次産品の食料加工業も行われる。近代の女性医師1号荻野吟子(おぎのぎんこ)(1851―1913)はクリスチャンの夫の北海道伝道に従ってこの地で医療に従事したが、その遺品などを展示する瀬棚郷土館がある。北部、島牧(しままき)村との境界をなす茂津多(もった)岬や狩場山(1520メートル)一帯は狩場茂津多道立自然公園域。瀬棚海岸は三本杉岩をはじめとする奇岩、景勝に富む。
[瀬川秀良]
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