蔵人式(読み)くろうどしき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「蔵人式」の意味・わかりやすい解説

蔵人式
くろうどしき

蔵人所(くろうどころ)職員の職務や儀式作法の規定を集めた式。890年(寛平2)に橘広相(たちばなのひろみ)によって作成されたもの(『寛平小式(かんぴょうしょうしき)』1巻)と天暦(てんりゃく)年間(947~957)につくられたもの(『天暦蔵人式』2巻)の2種類が認められる(『本朝書籍目録(ほんちょうしょじゃくもくろく)』『中右記(ちゅうゆうき)』)。全文は散逸してしまったが『西宮記(さいきゅうき)』『政事要略』『侍中群要』『撰集秘記(せんじゅうひき)』等に逸文が残されており、『天暦蔵人式』逸文は、現在100条余確認されている。『天暦蔵人式』の完成によって、蔵人の職掌の基準が確定され、以後の規範となった。

玉井 力]

『和田英松纂輯、森克己校訂『国書逸文』(新訂増補、1995・国書刊行会)』『古瀬奈津子著「蔵人式について」(『延喜式研究 2』)』

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世界大百科事典(旧版)内の蔵人式の言及

【侍中群要】より

…またこの書の特色の一つは各事項に関する種々の説を〈式〉〈家〉〈懐〉〈草〉〈草長〉等の標目を立てて列記することである。〈式〉が天暦蔵人式の引用であるという説や〈家〉が平親信の系譜を引く人物の手になるものとの説が出されている。今日では散逸してしまった寛平・天暦等の蔵人式の逸文を多く含む。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」