日本歴史地名大系 「懐橘談」の解説
懐橘談
かいきつだん
二巻 黒沢石斎著
成立 上巻承応二年、下巻寛文元年
写本 島根県立図書館ほか
解説 出雲国の地誌。著者は松江藩主松平家初代直政に、幕府の儒臣林羅山の推挙によって仕えた。序文によると、初入国の時に出雲各地を巡り、自然・村里・神社・仏閣などを見聞した記録を江戸の母に贈ったものが本書であると記される。上巻冒頭で総論を述べ、以下各郡ごとの地誌が記載される。「出雲国風土記」の形式に倣って記録され、風土記以来初の出雲国地誌として貴重。巻末に「国造事実再考」を収録するのは、杵築の項で北島家の説のみ取上げたため、千家家関係の記録を取入れて再叙述したことによる。書名の由来は中国の故事によったもので、懐から橘を落した陸積が、母に贈るためのものと答えたことになぞらえ、石斎が本書を懐にしたのを人に尋ねられ、母に贈ると答えたのが題名になった。写本の島根県立図書館本は松平家伝来のもので、原本ではないかといわれる。
活字本 「出雲文庫」第二編、「続々群書類従」第九
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報